好きな詩 1 「みえない樹」
パピルスに印刷された「生命の樹」
「みえない樹」
わたしのなかの 一本の樹
いつからか めばえてのびた 名まえのない樹よ
わたしのなかで 葉むらそよがせ きょうも 立っている樹よ
みえない もうひとりの わたしよ
そむかれて たったひとりだとおもった あの日
もどかしく わたしのことばが くちごもり
だれにもつたわらなかった あの日
わけもない いらだちが わたしをさしつらぬいた あの日
わたしはみた わたしはきづいた おまえが立っていることに
そのきずの そこここに
なおも芽ぶいて そらをさす
まっすぐなうた
わたしのなかの 一本の樹
葉むらを ゆめと そよがせて
かぼそいこずえ ふるわせて あたらしく きょうも のびる
みえないものよ のびるがいい
わたしのなかの 一本の樹よ
樹のかたちした わたしのこころよ
かぜの 告げる とおいことばを きくために
あの はるけさを 知るために
伊 藤 海 彦 詩
Nコン Juke Box 第44回 昭和52年度 高等学校の部
高松第一高等学校の演奏
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